交渉人ばい!

ぽけーってしよったら突然彼女からのSOS電話。
『クモ!クモ!クモ!!』
どうやら部屋を掃除しよったら1cmくらいの、平均サイズよりも一回りくらい多きクモが出現したご様子。
『どうしよ!どうしよ!どうしよ!!』
相当取り乱しとる。
『取り合えずティッシュで殺さんね。』
って他人事やけん冷静に言ってみる。
『無理!無理!無理ぃー!!』
これは困った。
広島から大阪までわざわざクモを殺しに行く訳にはいかん。
ここは長崎のネゴシエイターの異名を持つ俺の腕の見せ所。
『どぉーしぃよぉー…。』
そろそろ被害者(彼女)の精神状態も不安定になってきた。
できれば犯人(クモ)は殺さずに逃がしてやりたい。
『動いた!動いた!動いたぁ!!』
そうこうしよる間にも、犯人は被害者宅を我が物顔で動きまわっている。
これは仕方ない。
被害者に三択の選択肢を提案した。
①ベランダ追い込み作戦
ティッシュ抹殺作戦
③掃除機吸い込み作戦
もっとも確実なのは②の作戦だが、これには被害者の勇気と決断が必要になってくる。
③は掃除機の中で生存し続ける可能性があり、断念。
①はベランダまで追い込める確率が低いため、これまた断念。
『あははは、ははっは…。』
もう既に被害者は恐怖を通り越し、笑っている始末。
人間、限界を通り越すと笑いがでてくるらしいです。
このままでは精神崩壊の危険性だってある。
これは一刻を争う。
被害者の勇気を信じて②の作戦を実行することにした。
『せーのって言って!』
『分かった!』
手に汗を握るとは正にこのこと。
『しぇーのっっっ!!』
『…つぶした。』
『よーがんばった!また一つ成長したな!』
『ありがとう。』
そういった被害者のワキの下には、キラリと光る聖水がびっしょりだったらしいです。